奇跡の軌跡

恋に落ちてしまった私の物語 / 私だけが独身

私が車を出して彼の自宅近くまで送る時に、彼はいつも私の帰り道を心配してくれる。

最初は自宅付近まで来られるのが、マズイからかな?と思っていたけど、違うかった。

自宅付近で、私が一番帰りやすい道、わかりやすい道で降りようとする。

自分はその為に、一駅分電車に乗ってでも。

私の車にはナビがついているにも関わらず。


待ち合わせの時も、いつも彼から待ち合わせの場所の地図がメールで入るんだけど、何でこんな場所?と思うような事があった。

彼が使っている駅からは離れているのに...と。

それは、私が一番来やすい場所、車が停めやすい場所、迷わない場所全てを計算してくれていた結果の待ち合わせ場所だった。


こんな優しい人いるのかな。

彼からは常に愛を感じる。

前の彼は、迎えに行って迷ってしまう事があろうもんなら、すごく怒られたり、キレられる事が多かった。

こんな風に待ち合わせの場所まで考えてくれた事もなく、近所に来たら連絡してと言われ、電話しても出ない事が多々あった。

元彼の自宅も知らないので、連絡が取れなかったら終わりだ。これがとても不安だった。


人を思い遣るって事は、決して見えない事だけど、とても大きな力で、未来への信頼に繋がる事を実感する。

「ありがとう」と伝える事で、いつも彼から「そんな事で?」と言われるんだけど、本当にしみじみ感謝している。

人をもう一度信用させる力を取り戻せた。


この前の京都デートの帰り途にも「しまったな〜。京都で何か晩ご飯に出来るような物を買ってあげたら良かった...」って言ってくれた。

この言葉だけで、白飯2杯はイケるわさ。


どうやったら、こんなに優しくなれるのかな。

私も大概気は配れる方だけど、彼にはホント惨敗だ。


未だに彼の悪い所が一つも見えて来ない。


10年以上も同じ職場にいて、しかも仲良くもしていたのに、なぜ気付かなかったんだろう。

なぜ今頃恋に落ちたんだろう。


彼と結婚したかったな。

籍入れなくても良いから一緒に暮らしたかったな。

そう出来なくても、もっと早くに出会いたかった。そうしたら、寿命まで少しでも長くいられたのに。


来世があるなら正々堂々と、愛されたいと思ってしまう。

来世まで彼から愛された記憶が残っていますように。せっかく今世で出会えたけど、遅過ぎた。

ホクロ

祝日の今日、彼が時間を作ってくれた。

朝8:00に市内で待ち合わせ。

雨だからデートも行き先限られているのに、やっぱり彼だ。

きちんと計画してくれた。

雨の京都。

万華鏡ミュージアムに行って来た。

彩りの万華鏡が沢山あって、自分が万華鏡の中に入ってしまうような感覚に陥った。

すごく綺麗で、楽しくて素敵な時間を過ごせた。

私より彼のがはしゃいでるように見えた。

本当に可愛くて、頼りになる人だ。


お昼に有名店の親子丼を食べた。

早目に行って並んだ甲斐があった。

ふわふわで、出汁が効いていてペロリと一人前食べれちゃう位に美味しかった。

一緒に美味しいもん食べられるのは、幸せ二倍実感する。


その後は予想外に、彼からホテルへのお誘いが。

ちょっとびっくりしたけど、雨だしギュッてして欲しかったからお受けした。


しかも一緒にお風呂に入った。

彼の背中を流してあげた。

キスだけでも、クラクラする位に気持ちいい。

彼の汗の匂いすら、愛おしい。

3回も抱きあった。

彼も自分自信に驚いていた。

彼の望む事は何でも叶えてあげたくなる。

永遠に彼を感じていたくなる。


丁寧に愛していると、彼の太ももにホクロ発見。

私の左太ももにあるホクロの位置と、おおきさもほぼ同じだ。

今まで大嫌いだったホクロが、途端にお揃いのタトゥーでも入れたかのように宝物に変わった。これは本当に嬉しい発見。


幸せな時間はあっと言う間に過ぎ、チェックアウト時。

流れから、彼がいくつで結婚したか質問してしまった。

20年近くだった。

はっきりした答えを聞いてしまい、思いのほか長くて、絶対に勝てないと実感してしまった。

20年の歳月に勝てるわけない....

ダメージマックスで、泣きそうになっている時に、追い打ちをかけるように...「26才からあと7年待っていたら、お前と出逢えたのにな」って言われて余計に辛くなった。

どう辛くなったのかは、説明できないけど。

結婚期間が例え2年でも勝てないけど、20年と言う確固たる時間が、現実を見せられた気がした。

20年の間に夫婦としての歴史があり、嬉しい事、苦しい事を乗り越えてきて今の彼がある。

私がどれだけ気持ちを強く持ってしても、象とアリンコ位の差を感じてしまった。


帰りの車の中、それが辛くて思わず流れた涙に気付いていたハズだけど、彼は敢えて見て見ぬ振りをしていてくれた。

ありがたい。

横顔を見つめていると、私はこの人の為に存在したい、片時も離れたくないって思ってしまう。

大好き過ぎて日に日に辛くなってきた。


けど、少し先の未来には彼がまだそばにいてくれていると信じて明日を過ごそう。

彼の幸せを一番大切に考えられる私でいよう。

甘え

会話の流れから、略奪婚した女性が浮気をして?離婚になった話になった。

社内の女性。


彼から「雪はそんな魔性の女じゃないよね?」って問われた。


どうなんだろう。


電話を切ってから考えたけど、私は器用じゃない。

同時に2人は愛せない。

1人の人しか見えなくなる。

そして色んな人と付き合うよりも、長く深く付き合いたい。

でも正直割り切れて、乗り換えられる人が羨ましく思う。

自分の欲望に正直な人が。


私は彼を奪う事は1度も考えた事がない。

優しい彼だから、どっちを取るかだなんて事すら悩ませたくない。

最初から諦めてる。

彼には大切な家族がいて、生涯を共にする奥さんがいる。

彼の運命の奥さんとの間には、2人のお子さんがいる。


10年とかそれ位前に、お子さんの名前とか彼から聞いていたし、幸せそうだなーと思ってた。

彼がもっといい加減で、優しくない人だったら、私はズルくもなれたかもしれない。

でも彼が愛した奥さんはきっと絶対素敵な人だし、その奥さんとの間のお子さんも絶対に素晴らしい子なハズ。だって彼の遺伝子受け継いでる。


そんな理想とする家庭から、彼を引き割く事なんてできるわけない。

むしろ、きれいごとかもしれないけど、私以外誰も傷付かず、幸せでいて欲しいと心から願うのは最初から変わらない気持ち。


でも、彼への気持ちが大きくなるにつれて、苦しくなってきた。

どうしようもなくなる前に離れなければ。

別れを切り出さないとダメだと。


「別れようって言ったら受け入れてくれる?」

「無理。絶対に無理。受け入れられない」という彼が辛くなってきた。


彼と出逢えて嬉しくて、生きる喜び実感しているのに、半分は逃げ出したくなるくらい、どうにもならない未来が辛くて。


お酒の勢いもあり、私をかいかぶりすぎな彼に、毒を吐いた。

優しいなんかない!人のモノに手だして、見て見ぬ振りして自己中心的に自分の幸せ感じているだけだと食ってかかった。

初めてかもしれない。こんな毒を吐くのは。


雨の中、電話を掛ける為に出てくれた彼。


謝る事も自分を責める事もしないで。

全部解ってる。優しいから引き割くだなんて考えもしていない事、言えない裏側の気持ち、1人で苦しんでいる事も全部知ってるからって。


やっぱりそうだったんだ。

彼は本当に良く気のつく人だし、人の気持ちに寄り添う事が出来る人だから、全部解っている事、薄々気づいてた。

と言うか、むしろ考えていないハズはない。

私の想いは全部バレてた。


泣きながら

「なんで、待っていてくれなかったの?」

と一番言いたかった本音が出てしまった。

運命の人ならば、私と出会うまで結婚せずに待っていて欲しかったって意味なんだけど、

彼は「本当だね」としみじみ答えてくれた。

この言葉は、彼の大切なお子さんまで存在否定してしまう酷い言葉だと放ってから気付いた。


無神経な人でも、ズルイ人でもないから。

言葉を選びながら

「俺は本気だから。どうしようもない位本気だし、大好きなんだ。だからお前に甘えてる。

覚悟を持って甘えてる」


覚悟を持って甘えてるの意味がわからないけど、逃げも隠れもしないって意味なのかな。

明後日会ってくれる?と問う彼に

「考えといてあげてもいいよ」と上から答えた。


彼の事、やっぱり愛してる。